このコラムは、特許業務法人 信友国際特許事務所 所長 角田芳末が
知財関連のトピックに関連して書き記したものです
 
知的財産in群馬講演 2004(平成16)年 9月12日
 知的財産in群馬(2004年5月19日:群馬県産業技術センターでの講演より)
 (この原稿は、群馬大学知的財産戦略本部作成の冊子Gripに掲載されたものを編集したものです)
 

★特許法はその第1条に法の目的を掲げ、そこでは、発明の保護と利用を図ることにより、産業の発達に寄与することを目的とするとうたっている(図1参照)。

★発明の保護とはいうまでもなく排他的独占権を出願から20年保証するということで、発明の利用とは発明を公開させ、第三者に利用させるということである。

★講演で強調したかったのは、この保護と利用のバランスを図ることが最も重要であるということである。もとより、出願人はこの独占権を得るために出願するのであり、特許庁の審査官はその独占権が開示した内容に比べて妥当な広さであるか、それを利用する第三者の立場になって、その領域の広さの線引きをする。そのときのメルクマールは産業の発達に寄与するか否かでなければならない。特許の審査とは各あるべきであると思っている。

★知的財産の重要性が叫ばれて久しい。特許権に代表される産業財産権(以前は、「工業所有権」といっていたが、最近はこの言葉が使われるようになった。)は著作権と異なり、絶対的排他的独占権といわれる。つまり、特許庁に対して所定の書式を整えて一番早く持ってきた者だけを保護するのである。 二番、三番は、保護されないどころか、一番目の人(権利者)の許可なしでは自分の発明さえ実施できない。仮に実施すると、ある日突然、「侵害をしているからお金を払ってくれ。」といった警告文をもらうことになりかねない。場合によっては、その分野のビジネスから撤退も余儀なくされることもある。

★だから、特許はものすごく怖い場合がある。しかし、その反面、発明者としては膨大な利益が転がり込むこともありうるのである。

講演で、私は、特許をうまく使ったいくつかの企業を紹介した。特許庁が平成13年に日本の中小企業161社にアンケートを調査をした結果、一冊の本にまとめて講評したものがベースになっている。中小企業、ベンチャー企業にとって、知的財産、中でも特許とはどのような価値があるものなのか。特許をとるには金もかかるし、またそれを維持するにも維持年金というお金が必要だ。それでもなお、特許をとる意味があるのかどうか。

★特許をとることができれば、少なくとも責める側に回ることができる。個人にしても企業にしても責められるより、責める方が面白い。そんな元気な中小企業は日本にはまだまだあるはずだ。特許庁の調査は、その辺をうまく引き出しているように思える。図2は、調査した161社の中で、特許をどのように役立てているか、特許により自社の立場をどのように優位にしていったかなど、特許をもとに頑張っている中小企業の姿が想像できる。まず、自社の市場優位性を確保することができたという企業が多い。特許権を用いた製品により、他社製品と区別することができる。もし、他社がその技術を使おうとすれば、それを差し止めることもできるし、実施料を取ることもできる。特許を持っていることが大企業と対等にビジネスする上で役に立ったという企業も多い。

★私は、161社の中で、10社を紹介した。中には私自身が実際にその会社を見学したところもある。紙面の都合から、すべてを詳細に紹介することはできないが、講演で話した内容をかいつまんで報告することにしよう。まず、群馬県で取り上げられた企業に株式会社キンセイ産業(代表者:金子正元氏)がある。完全燃焼を追及した次世代型償却装置を開発した企業である。20件以上の周辺特許を取得し、特許の国際展開を図っている。次に紹介したのがお隣埼玉県の株式会社ワコー(代表者:岡田和廣氏)である。

 
 
 


 
 
 
 

3軸加速度センサ、3軸角速度センサを開発し、日米欧で100件を超える特許を取得している。ライセンス収入が会社の経営に大きく寄与しているというからすごい。岡田社長は、特許も市場性が必要だと述べている。

★次に、長野県の株式会社石原産業(代表者:石原張男氏)を紹介した。この会社は各種精密金型部品の設計、製造を行っている企業であるが、TECファイバーという大学で開発した特殊な光ファイバーの特許の実施権を取得した。特許権の利点は優位性であるという。四番目に紹介した中小企業は、愛知県の株式会社生方製作所(代表者:生方真哉氏)である。この会社は、産業用、車両用、家電用等の各種プロテクタや感震器、そのた各種センサを製造販売している企業であり、類型で750件の特許出願をしている。創意工夫が会社の経営理念であるという。生方社長は発明こそ至上の生き甲斐であるといっている。次に紹介したのが栃木県の有限会社大三金型製作所(代表者:小瀧大蔵氏)である。プラスチック金型製品の設計と製造が主な仕事である。技術アドバイザーの助言により特許出願をし、20を超える特許を持っている。生方氏は、特許は中小企業にとって信用の保証書であると述べている。

★次に紹介するのが高知県の株式会社技研製作所(代表者:北村精男氏)。この会社は私が特許庁に勤務していたときに見学をした会社でもある。サイレントパイラという独特な無公害工法機械を開発し、広く世界に特許出願している。地下空間を有効活用するための駐車場の開発にも取り組んでいる。青森県のテフコ青森株式会社(代表者:中山廣男氏)は、元気のでる中小企業としてテレビでも紹介された企業である。時計の文字盤の製造方法に関し「電着画像の製法特許」を開発した。

この基本特許は世界各国で注目されている。積極的な特許戦略で他社の市場参入を防ぎ、今では独壇場である。中山社長は特許を保有することで大企業とも対等な関係が維持できたと述べている。熊本県の株式会社トランスジェニック(代表者:井出剛氏)は、遺伝子破壊マウスで100%のシェアを持つ。総売上の100%が特許製品だというから、「すごい」の一言だ。井手氏は、特許は競争に勝つための最大の武器だという。

★講演で紹介した10社すべてを紹介することはできなかったが、この講演をする中で、中小企業の元気さとたくましさに触れて、私自身特許事務所の経営に携わる者として、ある勇気が与えられたような気がした。